東京奇譚集ー村上春樹短編集

小説

村上春樹の短編小説集である「東京奇譚集」について、モノの観点から、いつものように記事にしてみた。

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偶然の旅人

村上春樹の身に起こった「不思議な出来事」についての語られた形になっている短編である。最初にジャズ絡みの話が出てくる。

ケンブリッジで聴いたトミー・フラナガンの演奏と、ペパー・アダムズのレコード『10 to 4 at the 5 Spot』にまつわるあるエピソードを紹介している。

ジャズ・ポエット 限定版

トミー・フラナガン 

どちらも、偶然に自分に起きたことなのである。たいしたことではないが、偶然とはいえ、不思議なことだ。何万分の一の確率とも言える偶然さだ。

そして、ある知人が話してくれた偶然の不思議な出来事の話になっていく。41歳のゲイのピアノ調律師が、神奈川のショッピングモールで見知らぬ女性に声を掛けられる。偶然にも、二人は全く同じカフェで全く同じ本チャールズ・ディケンズの「荒涼館」を読んでいた。

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その出会いの後、仲違いをして何年も疎遠になっている実姉に電話をしてみようと思い立つ。そして、またしても偶然が重なっていくという話なのだ。

この「偶然の旅人」で一番キイワードになる覚えておきたい文章は次のところだろう。きっと。

かたちのあるものと、かたちのないものと、どちらかを選ばなくちゃならないとしたら、かたちのないものを選べ。それが僕のルールです。

ハナレイ・ベイ

村上春樹の小説で映画化されたものの1つである。吉田羊が主演していた。

サチの息子は19歳のときに、カウアイ島のハナレイ湾でサーフィン中に鮫に右脚を食いちぎられて死んだ。サチはホノルルの日本領事館からその知らせを受け、ハワイへ飛んだ。現地で火葬を済ませ、一週間ハナレイの町に滞在した。それ以来サチは毎年息子の命日の少し前にハナレイを訪れ、三週間ばかり滞在するようになった。それを10年以上続けている。そこで、日本人の二人の若者サーファーと出会い、片足のサーファーがいることを聞かされる。

息子を失って、10年間かけて、サチは心の隙間を埋めていく物語なのかな。死ぬまで息子だから当然愛し大事にしていたが、人間的には好意を持てなかったのが正直なところ。死んで10年かけて、ハナレイベイに毎年通い、息子に心を寄せる。そういう話だ。淡々と進む。ハワイの乾いた風のように。ある意味、不思議な話とも言えよう。

どこであれそれが見つかりそうな場所で

一人の男の失踪という大きな謎がストーリーのベースです。高層マンションの24階と26階を結ぶ階段の途中で、痕跡を残さずに消えてしまった。消えた男はメリルリンチに勤めている40歳。身長173センチ、体重、72キロ。Jクルーの通信販売で買った半袖ダーク・グレーのポロシャツとクリーム色のチノパンツ。アルマーニの金属縁の眼鏡をしていた。

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主人公は、ボランティア感覚で、毎日、男が消えた時間にその階段の踊り場に行く。そして、そこで老人や女の子と出会い、話もする。

20日後に男は仙台駅の待合室のベンチに寝ているところを保護される。それだけの話。

しかし、最後の文章が村上が一番言いたかったことであろう。多分。

私はまた別の場所で、ドアだか、雨傘だか、ドーナッツだか、象さんだかのかたちをしたものを探し求めることになるだろう。どこであれ、それが見つかりそうな場所で。

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