立原道造:ハードボイルド詩集館

24歳の若さで死んだ立原道造の詩。堀辰雄やリルケに傾倒。繊細・純粋で、音楽的な抒情詩を書いた。

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のちのおもひに

夢はいつもかへつて行つた 山の麓のさびしい村に
水引草に風が立ち
草ひばりのうたひやまない
しづまりかへつた午さがりの林道を

うららかに青い空には陽がてり 火山は眠つてゐた
――そして私は
見て来たものを 島々を 波を 岬を 日光月光を
だれもきいてゐないと知りながら 語りつづけた……

夢は そのさきには もうゆかない
なにもかも 忘れ果てようとおもひ
忘れつくしたことさへ 忘れてしまつたときには

夢は 真冬の追憶のうちに凍るであらう
そして それは戸をあけて 寂寥のなかに
星くづにてらされた道を過ぎ去るであらう

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(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会 (C)2008 小玉ユキ/小学館

詩集『萱草に寄す』

萱草に寄す(わすれぐさによす)という詩集。

萱草に寄す Kindle版
昭和初期の詩人、建築家として知られる立原道造の処女詩集。「音楽の状態をあこがれてつくつた」という「楽譜のやうな大判のうすい詩集」だった。「萱草に寄す」[風信子叢書刊行会、1937(昭和12)年]として自費出版され、SONATONE NO.1、夏花の歌、SONATINE NO.2から成り、九つの珠玉の詩が収録されている。
萱草に寄す (愛蔵版詩集シリーズ) (日本語) 単行本 – 1999/11/25
どうぞもう一度帰つておくれ 青い雲のながれてゐた日 あの昼の星のちらついてゐた日-。繊細な旋律でうたう愛と別れ。「萱草に寄す」のほか「暁と夕の詩」「優しき歌」を収録し、初版のデザインを模した装丁で再刊。
青空文庫でおやすみなさい2「萱草に寄す」立原道造(字幕付き)
青空文庫でおやすみなさい② 「萱草に寄す」立原道造(字幕付き) 青空文庫の著作権フリーの作品の中から チョイスしてお届けします。 寝る時間のお供に。 リクエストも受付中♪ ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 〓花澄〓 役者・ナレーターです。 写真家としても活動をはじめました。 所属事務所 ジェイクリップ ...

はじめてのものに

 ささやかな地異は そのかたみに
   灰を降らした この村に ひとしきり
   灰はかなしい追憶のやうに 音立てて
   樹木の梢に 家々の屋根に 降りしきつた

   その夜 月は明かつたが 私はひとと
   窓に凭れて語りあつた(その窓からは山の姿が見えた)
   部屋の隅々に 峡谷のやうに 光と
   よくひびく笑ひ声が溢れてゐた

   ――人の心を知ることは……人の心とは……
   私は そのひとが蛾を追ふ手つきを あれは蛾を
   把へようとするのだらうか 何かいぶかしかつた

   いかな日にみねに灰の煙の立ち初めたか
   火の山の物語と……また幾夜さかは 果して夢に
   その夜習つたエリーザベトの物語を織つた

坂道のアポロン画像 に対する画像結果
(C)2018 映画「坂道のアポロン」製作委員会

夢みたものは

夢見たものは…… 立原道造 (朗読)
ゆっくり生きるより 朗読 はる

夢みたものは ひとつの幸福
ねがったものは ひとつの愛
山なみのあちらにも しずかな村がある
明るい日曜日の 青い空がある

日傘をさした 田舎の娘らが
着かざって 唄をうたっている
大きなまるい輪をかいて
田舎の娘らが 踊りをおどっている

告げて うたっているのは
青い翼の一羽の 小鳥
低い枝で うたっている

夢みたものは ひとつの愛
ねがったものは ひとつの幸福
それらはすべてここに ある と

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