中原中也対談 お久しぶりです

中原中也さん、今日はご参加いただき、感謝いたします。お久しぶりです。こちらに来るのは、大変ではなかったですか?

お久しぶりです。100年は経っていないよね。まずは、来たことね。実は向こうでの生活が自分には結構楽しくて、自分はそこに留まる方を今まで選んできたので、この日本にもう一度出てくるのは確かに大変でしたね。

え、今、言われたことは、霊界の話ということなのでしょうか?霊界的な場所というか、天国と言うか、そういうものがあるのでしょうか?

なんて言ったらイイのかな。こっちの世界と余り変わらないっていうのかな。天国とか地獄とかというものもありはするのだけれど。向こうでは、上と下って言うんだけど。ほとんどのこちらの世界に来た人は、その間の中間にいて、自分の想いが描いた世界というか場の中で、存在していますよね。存在って、言葉はおかしいかな?

つまり、そこは、死んだ人の思念が沢山うごめいている場所ということですか?

そう言われてしまうと、我々の身も蓋もない感じになってしまうなぁ。確かに死んだときに肉体を置いてきたからね。でも、うまく言えないなあ。自分の思念に昔の自分の体や顔が何故かくっついているんだよね。生きている時と同じでね。

良く判りませんが、それでは自分の体が生きている人間の様にあるということなのですね。

そうなんだよね。普通に、人間なんだよね。肉体は存在しないし、生きていないのにね。不思議だよね。普通に相手も見えるし、話も出来るし。ただ、その人っていって良いのかな?その人の生きてきた世界が色濃く思念としてその人に残っているから、会話がかなり難しいよね。日本人じゃない人も多いし。

ますます、混乱してきましたよ。中原さんがいた場所というのは、この日本に近いと言われるし、人も生きているように沢山いると言う。全く、わからないのですが。

そうだよね。イメージ沸かないよね。とにかく、自分の思いが思念となり形作られていくんだよね。で、その人の思念が自分の肉体的なものや空間の場所を作っていくんだよね。だから、その思念が弱い人や悪い人は下の世界に行ってしまうのね。自分と自分の周りを形作れないから、ナメクジみたくなっちゃうのね。形が形にならないから、中間地点に置いていけないのね。そういう方は結構多いですよ。

中也さんは、想いが豊かで色々なものを形作れたということですね?

多分、そういうことなんだろうね。でも、僕なんか、全く駄目な方よ。凄い人が一杯いるから。想いって、ほんとに、凄いね。重いし?自分も良く会うのは、小説家や詩人がどうしても多いんのだけど、彼らは皆凄いよね。想いが深いもの。

まだまだ聞きたいことが沢山あるのですが、時間が来ました。次回、もっと、向こうの世界のことを聞かせて下さい。この第1回の対談の記念に、向こうで作った詩でも良いですが、聞かせて戴けませんか?

向こうでも、こっちでも人気だったのは、やっぱり、「汚れちまった悲しみに・・・」だよね。向こうでは、皆に、思念の強さが半端じゃないと言われるよ。だから、早く僕は死んでしまったのかなあ。じゃあ、読むね。
汚れちまった悲しみに
汚れつちまつた悲しみに
今日も小雪の降りかかる
汚れつちまつた悲しみに
今日も風さへ吹きすぎる
汚れつちまつた悲しみは
たとへば狐の革裘かはごろも
汚れつちまつた悲しみは
小雪のかかつてちぢこまる
汚れつちまつた悲しみは
なにのぞむなくねがふなく
汚れつちまつた悲しみは
倦怠けだいのうちに死を夢む
汚れつちまつた悲しみに
いたいたしくも怖気おぢけづき
汚れつちまつた悲しみに
なすところもなく日は暮れる……
中原中也は確かに存在した
中原中也 全詩集
昭和12年(1937)、友人の小林秀雄に詩集『在りし日の歌』の原稿を託し、30歳で夭折した中原中也。喪失の悲しみに耐え、詩と人生に衝突するように時代を駆け抜けていった希有な詩人の魂の軌跡を一冊に収録。歌集『末黒野』、第一詩集『山羊の歌』、没後刊行の第二詩集『在りし日の歌』、生前発表詩篇、草稿・ノート類に残された未発表詩篇を全て網羅した決定版全詩集。巻末に大岡昇平「中原中也伝――揺籃」を収録。
中原中也 朗読少女
「汚れつちまつた悲しみに……」「頑是ない歌」「サーカス」などの代表作をもつ詩人・中原中也。普遍性のある作品として評価も高く、多くの作曲家が曲を寄せていることでも知られています。今回は中原中也の詩の中から、乙葉しおりが選んだ19編を朗読。小学校や中学校など教科書で読んだ詩。楽曲として聞いたことのある詩も含まれているはずです。
次回の中原中也氏との対談に期待しよう。向こうの世界をもっと教えてほしいね。ではでは。
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