横浜流星的ショートショート⑦:Of Missing Persons

小説

今回のショートショートは、横浜流星のイメージとジャクソン・ブラウンの曲が交錯するような世界。深夜の都会の中の隠れたバー。女との会話。それだけの設定。

Of Missing Persons

ーどうしていたの?今まで。

え?

バーの店内の照明は暗く、声が、壁に沁み込んでいく。

低い音で、ジャクソン・ブラウンの「Sleep’s Dark and Silent Gate」が流れていた。

Sleep's Dark and Silent Gate
Provided to YouTube by Elektra Asylum Sleep's Dark and Silent Gate · Jackson Browne The Pretender ℗ 1976 Elektra/Asylum Records for the United States and WEA...

知らない女(ひと)だった。

ー忘れたの?

え?

あ、はい。どうも事情が呑み込めなくて。お話の。

彼女の前には、注文されたバーボンのロックのブライトンがそのまま残っている。グラスの表面に水滴がついたまま。

ー随分と探したのよ。私。

ーこんな都会の中の奥まった先にある小さなビルの上にあるなんて。わかりにくいわよね。

彼女は美しかったし、若かった。でも、声は落ち着いていた。上品な服を着ていたし、ネックレスにも気品があった。

本当に、わからないのです。お客様のことが。申し訳ないのですが。

ーそういう答えが返ってくるなんて、思いもよらなかったわ。

ーでも、そういうことも許してしまいそうなオールドファッションな素敵なお店ね。

はあ。手持ち無沙汰に、グラスを磨いていた。

ー本当に、私のことがわからないの。

レオナルド | 横浜流星オフィシャルブログ「shooting star」Powered by Ameba
出典:レオナルド | 横浜流星オフィシャルブログ

はい。

ー2年も経ったのよ。貴方がいなくなってから。

・・・・。

ー事故にでもあったの?記憶がなくなるような。

いえ。全く、そんなことはありません。2年前も、ここで、同じようにこの商売をしておりました。

ーそれは嘘ね。実際に、今、ここに、貴方がいるわ。

ええ、ですから。私はずっと、ここで、同じこの仕事をしておりました。

ー何故、逃げる必要があったの?

・・・・。

ー何も悪いことはしていないし。お金も私が返したし。

お客様。本当に、仰っていることが理解できません。

彼女はようやくブラントンに口をつけた。グラスの縁に赤いルージュが残った。

ーそうか。こういう方法もあるのか。役者だわね。考えもつかなかったわ。

え?どういうことでしょうか?

ー頭の良い貴方のことだけど。こんな態度をするなんて、考えもしなかったわ。

・・・・。もしかしたら、私に瓜二つの人がいて、その方を探しているのでは?

ーそんなことはないわ。貴方の喋り方も仕種も立ち振る舞いも全て、あの頃の貴方に間違いがないから。

お客様。誠に申し訳ございませんが、本当に、あなたのことは知らないのです。

ー貴方の体のことを私は良く知っているから、体を合わせれば、すぐにわかるわ。

滅相もありません。グラスが空いたようですが、何かお飲みになりますか?

ーダイキリを頂戴。

今では、ジャクソン・ブラウンの「Of Missing Persons」がかかっていた。

Of Missing Persons
Provided to YouTube by Rhino/Elektra Of Missing Persons · Jackson Browne Hold Out ℗ 1980 Asylum Records Organ: Bill Payne Bass Guitar: Bob Glaub Assistant En...

ーまあ、いいわ。これから、いつでも会えるわ。

女は、店を出て、メールを打った。

「確かに。間違いなく。とても優秀な素材です。」

Monochrome Photography of A Person

座長、お元気でしょうか。貴方はMissing Personには、なり得ない。そこの場所がどんなに暗くて静かな場所だとしても。待っています。

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