フィリップ・マーロウ、再び

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レイモンド・チャンドラー

レイモンド・チャンドラーの亡きあと、作家没後作品として、4作、別の作家が、書いている。

その中で、出色なのは、やはり、一番最後の没後作品であるローレンス・オズボーンの『ただの眠りを:ONLY TO SLEEP』だろう。

なんてたって、フィリップ・マーロウは、72歳なんだぜ。私立探偵は十年前に引退して、今はメキシコで隠居の身って設定なんだから。面白くねぇ。この、設定。ジジイのマーロウって、どうなんだろうかね?

こんな感じで、物語は始まる。

1984年、私はメキシコのバハカリフォルニア州エンセナダの数マイル北にあるラリー・ダニッシュの家を買った。そして、今も老探偵として、あるいは頭は固く心はヤワな男として、中年の家政婦マリアと、ゴミ捨て場から拾ってきた野良犬一匹と一緒に住んでいる。  

出典:ただの眠りを(P.1)

最後のマーロウは72歳。足を悪くし、杖を突く。話は、全編、メキシコの熱い太陽の光のもと、青空と砂の中で、展開していく。

そこは、まさに、映画『テキーラ・サンライズ』の世界でもある。マーロウの酒は、ギムレットだけれども。

歳を取ったマーロウは金にも女にも昔のままだが、歳を取り、哀愁がこの上もなく背中に横たわる。

それでも、歳を取ったマーロウの心の中には、若者にはないノブレス・オブリージュが脈々と流れているのだった。

だからこそ、ハードボイルドで素晴らしい男なのである。

レイモンド・チャンドラーよりも、読みやすい、最後のフィリップ・マーロウ。是非、ご一読あれ。

ただの眠りを(ONLY TO SLEEP):ローレンス・オズボーン

フィリップ・マーロウ、72歳。私立探偵は十年前に引退して、今はメキシコで隠居の身。ホテルのテラスでマルガリータを啜り、カード遊びで時間を潰す毎日だ。しかしそんなマーロウに久しぶりの依頼が。溺死したとされる不動産業者が実際に事故で死んだのか確かめてほしいという。保険会社は偽装を疑っていた。マーロウは男の足跡を追い、カリフォルニアとメキシコを行き来する。やがて男の妻、美しいドロレスと出会い―。異色の作家がチャンドラーに捧げて描く、杖を突きながら異国の地を行く、老境のマーロウ!

内容紹介

ちなみに、レイモンド・チャンドラー没後の他の3作品についても、触れておこう。

プードル・スプリングス物語:ロバート・B・パーカー

まず、最初が、『プードル・スプリングス物語』で、あの、ロバート・B・パーカーが、チャンドラーの同名の未完遺稿を書き継いだものだ。

ちなみに、チャンドラーの遺稿部分は全41章のうち最初の4章だけ。ほとんど、パーカーが執筆したのである。

な、なんと、フィリップ・マーロウが結婚した、のであった。あの『長いお別れ』の続編なのだ。


レイモンドチャンドラー/ロバートBパーカー:プードルスプリングス物語:<初版帯>

『長いお別れ』で出会った富豪の娘リンダ・ローリングと結婚し、プードル・スプリングスの豪邸に住むことになったフィリップ・マーロウ。だが、妻の金で暮らすことを潔しとしないマーロウは、町はずれに探偵事務所を開いた。最初の依頼人は、借金を返さない男を捜してほしいというカジノ経営者だったが、一見単純な依頼はやがて殺人事件へと発展する。巨匠の未完の遺作をパーカーが完成させた、話題のハードボイルド長篇。

内容紹介

おそらく夢を:ロバート・B・パーカー

第2作目は、同じロバート・B・パーカーの『おそらく夢を』だ。

これは、レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウ『大いなる眠り』の続編になる。

なんてたって、ロバート・B・パーカーは、レイモンド・チャンドラーの「大いなる眠り」も題材にして、大学の卒業論文にチャンドラー研究を選んだのだからね。それは、続編を彼なりに書くよね。

私立探偵のフィリップ・マーロウは、スターンウッド家の執事ノリスからの失踪人捜索の依頼を受けて、その邸を再び訪れる。当主であった将軍はすでに亡く、長女ヴィヴィアンは妹のカーメンをサナトリウムに入院させていたが、精神を病んでいる彼女が突然に姿を消したのだ。だが、行方を追い始めたマーロウの前に、巨大な権力がたちはだかる。ハードボイルドの巨匠が贈る、『大いなる眠り』の続編にして、チャンドラーの未完の遺作を完成させた『プードル・スプリングス物語』につづく〈パーカー版フィリップ・マーロウ〉第2弾。

内容紹介

おそらく夢を:ベンジャミン・ブラック

3作目は、英文学最高峰のブッカー賞受賞作家ジョン・バンヴィルが別名義で挑んだ、チャンドラー『ロング・グッドバイ』の公認続篇となる、『黒い瞳のブロンド』だ。

私立探偵フィリップ・マーロウのオフィスを一人の優美な女が訪れた。その名はクレア。髪はブロンドだが、瞳は黒色という珍しい取り合わせだ。香水会社を営む裕福な一族の出だという彼女は、突然姿を消したかつての愛人を探して欲しいと依頼する。マーロウは、なぜ自分にと訝りながらも、この美しい女の依頼を受けて調査を始めた。それが忘れがたい過去と再び向きあう契機になるとは知らず…。英文学最高峰のブッカー賞受賞作家ジョン・バンヴィルが別名義で挑んだ、チャンドラー『ロング・グッドバイ』の公認続篇!

内容紹介

マーロウのプリン

ハードボイルドなフィリップ・マーロウは、バーボンかギムレットでナッツのつまみなどを頬張りながら、読むのがベターなんだろうけど。

近頃は、スィーツが向いているかもしれない。

とすれば、それは、やはり、横浜のマーロウのプリンだろうね。

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