ここにいるということは、俺は死んでいないのか。それとも、この目覚めたという自覚自体も、夢なのか。カーテンを通じて、朝と思える温かいような淡い薄白黄色の陽が射しこんできている。このベッドしかない白い病室の中に。俺は多分生きているのだ。少しずつ意識が清明になっていく感じもあるし、逆に眠りに戻っていきたい気持ちもある。長い時間を多分眠っていたはずなのに、尿意すら感じない。これはやはり夢の続きなのか。それとも管を付けられた植物人間のように実のところ、俺は横たわり外見上は眠っていて、意識だけが動いている状態を作られているのか。永遠の眠りについているのだろうか。それは遠くの未知の惑星に期待を抱いて長い冬眠カプセルで何十年と時間の経過することを自分に課さねばならないインターステラーな人と同じようなことなのだろうか。細胞というものは冬眠することで仮死状態でいることで多くの年月が過ぎても普通に元に戻れるものなのだろうか。俺は色々と頭の中で意識の中で考えている。夢の中で俺は考えているのだろうか。それもまた、不思議な夢だ。色々なことを考える自分の状態を客観的に俯瞰してみている自分を意識した夢っていうのがね。だから、これは夢ではないのではないか。堂々巡りの中にいる俺。こういう時に大事なことは何かって言えば、それは俺以外の誰かがここに現れるほかにないことに決まっている。誰か別の存在が俺に登場して俺に話しかければ、そこには、夢か現実か、死なのか生なのか、ということにある程度の推定が出来るはずなのだが。だが、今のところ、ここは静謐で誰の足音もしないし、人間以外の虫や植物や動物の気配すらない。あるのは、外から差し込む陽の光だけである。部屋は白さの中にある。俺は、こういうことを考えているのに、起き上がらない。何故だ。横たわっているのが、とても気持ち良いのだ。不思議と。やはり、俺は意識だけの存在なのか。生とは別の世界にいるのか。
2つの部屋
それならば。俺は自分の近い過去について思いを馳せてみた。俺の直近の想い出だ。俺がここでこういう不思議な状況以前の俺の存在があった時のことを思い出そうとした。直近の俺を俺は思い出せない。まずは、俺の年齢と顔がそもそも浮かべることが出来ないのだ。人は自分の過去を自分なりに思い描くためには、自分なりの自分の姿を意識の中に投影しないとダメなのである。俺は自分の姿をイメージ出来ないのだ。俺が俺であることの意識は俺が俺のイメージを持っているから成り立つはずなのだ。俺はどうなっているのだ。俺は俺なのに、俺ではないのか。俺が俺として成り立っていないのか。でも、俺は俺と今俺のことを言っているという自覚はあるのだ。これには、俺としても、大変に戸惑ってしまった。そこで、俺は、直近でなく、俺の生れた時から今までの俺に繋がる俺の歴史を思い浮かべようとした。この白く淡い日差しが揺れるような部屋の中でだ。カラフルな色は俺の頭の中に浮かんでくるのだが、両親のことも兄弟のことも学校のことも友人のことも好きだったことも彼女のことも(全てあればの話だが)浮かんでは来ないのだ。それでも、色彩のようなものが目には映ってくる。俺は無なのか。
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例えばだ。俺は宇宙船の中で試験管ベイビーのように人工授精で生まれてそのまま冬眠し長い月日が経過し今目覚めたっていうこともありなんじゃないかとしたら、どうなんだ。俺には、何の過去もないな。しかし、そんな状態で今いる俺はこういうことを感じるのだろうか。何の教育も知識も植え付けられていないのだぞ。俺には、人間の営みというかそれなりの生き方の流れが判っているのだ。どういうことなんだろう。待てよ。冬眠しているが栄養は与えられ人間として成長していく俺の脳の中に、外部から教育をしていくことは出来るかもしれないな。それが科学の発展ということか。だが、どうにもしっくりこない。この考えも。また、眠くなってきた。眠りが気持ちの良いことであることを俺は知っている。当たり前のことだが。また、俺は遠い眠りの中に入っていくのか。たまたま、俺は起きてしまったのか。それとも、眠っているのに夢を見せられているのか。はたまた、これが死んでいる状況なのか。否、生きているが植物状態なのか。だが、不思議と、俺は今の俺のこの状況に満足している感じだ。深く考えなければ、これもまた良いだろう。そう俺は思い始めているのだ。
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